ⓔコラム8-4-7 早期再分極症候群 (ERS) の病態生理

 AntzelevitchらはBrugada症候群と同様に,右室流入路または左室後下壁における心外膜細胞と心内膜細胞の貫壁性電位勾配がJ波または早期再分極 (ER) の機序であるとする再分極異常説を提唱している.この考え方からAntzelevitchらは2010年に「J波症候群」の概念を提唱した1).すなわち,Brugada症候群のJ波を含むST上昇とVF,ERSのJ波とVF,低体温時のOsborn波に伴うVF,一部のST上昇型の急性虚血に伴うVFなどの機序には,いずれも共通である心外膜細胞と心内膜細胞の貫壁性電位勾配が関与するとされる1).一方で,Nademaneeらは,ERS患者に詳細な心外膜マッピングとアブレーションを行い,著明な伝導遅延を認め脱分極異常が示唆される症例と,伝導遅延を認めず再分極異常の関与が示唆される症例が混在することを報告している2)

〔清水 渉〕

■文献

  1. Antzelevitch C, Yan GX: J wave syndromes. Heart Rhythm, 2010; 7: 549–558.

  2. Nademanee K, Haissaguerre M, et al: Mapping and ablation of ventricular fibrillation associated with early repolarization syndrome. Circulation, 2019; 140: 1477–1490.